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薬局プレアボイドをわかりやすくご紹介!ポリファーマシー対応編

■減薬による服薬アドヒアランス向上(ポリファーマシー解消)

● マンガの解説

糖尿病や糖尿病性神経障害によるしびれ、高血圧症にて7種類の薬で治療中のAさん(60歳代、男性)
 
糖尿病性神経障害によるしびれに対しての治療薬
プレガバリンOD錠150mg 1回1錠(1日2錠) 1日2回 朝夕食後
メコバラミン錠500μg 1回1錠(1日3錠) 1日3回 毎食後
メキシレチン塩酸塩錠100mg 1回1錠(1日3錠) 1日3回 毎食後

受診間隔が1か月空いていたため、話をお伺いすると、服薬が億劫で薬が残っていることが判明しました。

詳しくお伺いすると服用剤数及び服用回数が多くアドヒアランスが低下しており、ポリファーマシー(※)が生じていると考えられました。
※「ポリファーマシー」とは、単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服用誤り、服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態を言います。

さらに体調・症状を詳しくお伺いすると、「薬を飲んでいてもしびれは変わりない。もともとそんなにひどくもなかった。」と聴取しました。

しびれの状態は変わりなく、ひどくもないとのことであれば、メコバラミン錠500μgとメキシレチン塩酸塩錠100mgを減らすことができるかもしれないと判断しました。

メコバラミン錠500μgの添付文書「重要な基本的注意」に「本剤投与で効果が認められない場合、月余にわたって漫然と使用すべきでない。」と記載されています。
また、メキシレチン塩酸塩錠100mgの添付文書「重要な基本的注意」に「糖尿病性神経障害の患者に投与する場合、本剤による治療は原因療法ではなく対症療法であるので、漫然と投与しないこと。」と記載されています。

医師へAさんの服薬状況としびれの経過、効果が認められない場合の漫然投与の注意に関する情報提供、さらに、服薬アドヒアランスの向上を目的としたメコバラミン錠500μgとメキシレチン塩酸塩錠100mgの減薬の提案を行いました。

メコバラミン錠500μgとメキシレチン塩酸塩錠100mgは中止となりました。

糖尿病性神経障害によるしびれに対しての治療薬はプレガバリン1種類のみ継続となりました。
プレガバリンOD錠150mg 1回1錠(1日2錠) 1日2回 朝夕食後

薬剤師「糖尿病の治療をしっかりと行うことでしびれの改善も期待できます。食事・運動療法と薬の服用も継続しましょう」

2種類減薬から4週間後のしびれの状態をお伺いすると「薬を減らしてもしびれが悪くなることはないよ」と症状悪化がないことを確認しました。

6種類以上の内服薬から2種類減薬しており、症状の悪化もないことから調剤報酬で減薬について評価される「服用薬剤調整支援料1」の要件を満たしているため算定しました。

※紹介した漫画・薬局プレアボイドは実話に基づき内容を一部変更しております。

●患者さまから信頼される薬剤師になるためのポイント

〇「服薬アドヒアランス」とは、患者さまが積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることを意味しています。服薬アドヒアランスの低下要因として、無関心、病識・薬識不足、身体的要因(手が不自由、物忘れなど)、服薬指示の誤認識などの患者さま側の要因と、副作用、多剤、薬剤の剤形、味・匂いなど薬剤による要因などがあげられます。
アドヒアランス低下の要因を聴取、分析して患者さまへ説明したり、服薬支援を行ったり、処方薬に対する提案などを行うことが薬局薬剤師に求められています。

〇薬局薬剤師も厚生労働省が公表している「高齢者の医薬品適正使用の指針」や日本老年医学会が発刊している「高齢者の安全な薬物 療法ガイドライン」を参考として、「ポリファーマシー解消」に努めています。

〇「服用薬剤調整支援料」とは、6種類以上の多剤を服用している患者さまに対して、薬局薬剤師が医師に減薬を提案して実際に減薬(2種類以上減少し、その状態が4週間以上継続)されたこと(服用薬剤調整支援料1)や、複数の保険医療機関より6種類以上の内服薬が処方されていた患者さまについて、患者さま等の求めに応じて、服用中の薬剤について一元的把握を行い、重複投薬等の解消に係る提案をしたこと(服用薬剤調整支援料2)を診療報酬上で評価する項目です。ポリファーマシーの解消を目的としており、薬局業務の重要な評価項目のひとつです。

●過去の国家試験問題&対策問題に挑戦しよう!

今回のプレアボイドに関連する過去の国家試験問題はPDF版でご紹介しています。
ぜひダウンロードのうえ、問題に挑戦して、理解を深めてみてください。
>>「マンガでわかる薬局プレアボイド(PDF版)」はこちら!

<掲載問題>
■過去の国家試験問題 第107回 問318−319
■ 過去の医師国家試験問題 国試118回 B問題15
 ∟医師国家試験にも「ポリファーマシー」が出題されており、注目されている分野です。

まとめ

アイングループでは、東京大学大学院薬学系研究科・育薬学講座と共同して、薬局プレアボイドを継続的に集積し、教育研修や自己研鑽に活用しています。薬物療法や医薬品の知識に加えて、薬局プレアボイドの実例からも学び、気付きを得ることで、幅広い視点と確かな専門性をもって、薬物療法に貢献していきます。
アイングループのコーポレートウェブサイトでは、今回ご紹介した事例以外の薬局プレアボイドもご紹介しています。
薬局プレアボイドについてさらに知りたい方はぜひご覧ください!
>>「アイングループの薬局プレアボイド」はこちら

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