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薬局プレアボイドをわかりやすくご紹介!副作用(手足症候群)対応編

■フッ化ピリミジン系抗がん剤による手足の荒れには要注意!

● マンガの解説

大腸がんに対しmFOLFOX6療法(フルオロウラシル・レボホリナート・オキサリプラチン)を外科で施行中のAさん(70歳代、女性)

本日、糖尿病内科の処方箋を応需しました。

服薬指導時に、薬剤師がAさんの指先が荒れていることに気づきました。

Aさんは、外科でフルオロウラシルを投与中であることから、痛みやピリピリ感等の症状も出ていないか確認が必要と考え、聞き取りを行いました。

Aさんに症状を詳しく伺うと、「手荒れが最近ひどくなり、痛みもあります」と聴取しました。

フルオロウラシルはフッ化ピリミジン系抗がん剤であり、重大な副作用に手足症候群があり、初期症状としては、「チクチク、ピリピリした痛み」「赤み(発赤、紅斑)」「むくみ」「カサカサする乾燥」「角化(皮膚表面が硬く、厚くなってガサガサする状態)」「ひびわれ」「水ぶくれ(水ほう)」などがあらわれることがあります。

Aさんの訴えから「手足症候群」の症状が発現している可能性が推察されました。

手足症候群の予防としては、ヘパリン類似物質含有軟膏等の保湿剤でスキンケアをすることが重要です。荒れがひどく、ひびわれ等を生じている場合はステロイド外用薬の使用も必要になります。

現在、Aさんの塗り薬の使用状況を伺うと、「ステロイド外用薬は使ったことはないです」とのことでした。

Aさんが訴えている症状から、重篤副作用疾患別対応マニュアル(手足症候群)の対処法・治療方法によるとvery strongのステロイド外用薬を併用することと記載されています。

OTC医薬品には、「weak(弱い)」「medium(普通)」「strong(強い)」ランクの商品のみのため、医療用医薬品の処方が必要となります。

緊急を要すると判断して、外科の医師へ疑義照会を実施しました。
Aさんに手荒れ、痛みの症状がでており、手足症候群の副作用が発現している可能性について、情報提供しました。

Aさんの症状確認と状況の聴取からvery strongクラスのステロイド外用薬を処方提案しました。

ステロイド外用剤と保湿剤が処方となりました。

ジフルプレドナートクリーム0.05% 10g 塗布 1日3回 手
ヘパリン類似物質クリーム0.3% 50g 塗布 1日3回 手

保湿剤であるヘパリン類似物質クリームを手全体に広くべたつくくらいの量をぬり、荒れているところにステロイド外用薬を上塗りするように説明しました。

次回来局時、手荒れの状況を確認しました。
Aさん「荒れているところにステロイドを塗って改善しました。保湿剤もしっかり使っています」と聴取しました。
手足症候群の症状が改善して、外来がん化学療法を継続できています。

※紹介した漫画・薬局プレアボイドは実話に基づき内容を一部変更しております。

●患者さまから信頼される薬剤師になるためのポイント

○外来がん化学療法の支持療法における薬局薬剤師の役割
外来でのがん治療や抗がん剤の院外処方の増加に伴い、薬局においても抗がん剤の用法用量等が適切であるかを確認することが必要となっています。また、がん治療による副作用の予防や軽減を目的とした支持療法についても、薬局薬剤師が担う役割が増えています。副作用の発現の有無や副作用の程度を、継続的に確認し、必要に応じて、患者さまや医療機関へ情報提供を行い、適切ながん治療や支持療法を受けられるようにサポートすることも薬局薬剤師に求められています。患者さまへの情報提供・服薬指導では、製薬会社や医療機関が発行している患者さま向け資材等を用いて、分かりやすく伝えることで、副作用の早期発見や悪化防止等の予防につながります。

○副作用のGrade評価
抗がん剤の副作用に対して加療や薬剤の中止、再開後の用量等を判断するうえで、副作用のGrade評価を行うことが求められます。患者さまからの症状の聞き取りや検査値等を基に、副作用のGrade評価を行い、適切な治療に役立てます。
Grade評価には主に、米国National Cancer Instituteが公表しているCTCAEを日本臨床腫瘍研究グループが翻訳した「有害事象共通用語規準v5.0日本語訳JCOG版(略称:CTCAE v5.0 - JCOG)」が用いられます。

○診療ガイドライン、重篤副作用疾患別対応マニュアル
抗がん剤の副作用への対応には、電子添文の記載を基本として、診療ガイドラインや厚生労働省が発行している重篤副作用疾患別対応マニュアル等を参照し、支持療法の実施や抗がん剤の減量・休薬をエビデンスに基づいて医療機関へ提案します。

●過去の国家試験問題&対策問題に挑戦しよう!

今回のプレアボイドに関連する過去の国家試験問題やオリジナル対策問題はPDF版でご紹介しています。
ぜひダウンロードのうえ、問題に挑戦して、理解を深めてみてください。
>>「マンガでわかる薬局プレアボイド(PDF版)」はこちら!

<掲載問題>
■過去の国家試験問題 第99回 問262−263
■国家試験対策問題 (国試108回 問264-265を改変) 

まとめ

アイングループでは、東京大学大学院薬学系研究科・育薬学講座と共同して、薬局プレアボイドを継続的に集積し、教育研修や自己研鑽に活用しています。薬物療法や医薬品の知識に加えて、薬局プレアボイドの実例からも学び、気付きを得ることで、幅広い視点と確かな専門性をもって、薬物療法に貢献していきます。
アイングループのコーポレートウェブサイトでは、今回ご紹介した事例以外の薬局プレアボイドもご紹介しています。
薬局プレアボイドについてさらに知りたい方はぜひご覧ください!
>>「アイングループの薬局プレアボイド」はこちら

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